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教育システム・臨床研究の概要
01久留米大学医学部外科学講座小児外科部門(以下 久留米大学小児外科)の後期研修について
久留米大学小児外科では専門である小児外科はもちろんのこと、小児診療・一般成人外科診療に必要な研修をプログラムに盛り込み、小児診療における基礎・診察・治療手技、成人外科診療も含めた外科的診断法・治療技術を効率よく学ぶことができ、小児・外科両分野おけるスペシャリストを育成します。また、上記に加えて栄養療法や漢方治療、医療安全などを学ぶことにより、多角的なセカンドキャリア構築を目指した研修を行います。 小児外科専門医の取得は外科専門医を取得することが必須条件となります。後期研修終了後に小児外科の専修を開始した場合は、小児外科専門医の取得が数年遅れますので、小児外科医を目指される場合は3年目からの入局をお勧めしています。 このページでは久留米大学医学外科学講座小児外科部門の特徴とキャリアアップの過程を説明します。
- 1. 久留米大学医学部外科学講座小児外科部門の特徴
小児・外科両分野おけるスペシャリストを育成します。
我々、久留米大学医学部外科学講座小児外科部門(以下 久留米大学小児外科)は大きな2つの大きな柱があります。その1つは小児外科疾患の臨床・教育・研究、もう1つはセカンドキャリアを見据えたNutrition Support Teamや医療安全などの病院内活動です。
まず、久留米大学小児外科ではどの様な疾患を治療しているのでしょうか?簡単に言うと「頭と心臓と骨以外全部」です。新生児外科(消化管その他の先天奇形)、悪性腫瘍、肝・胆道疾患(胆道閉鎖症や胆道拡張症など)、食道から肛門までの消化管疾患(食道閉鎖症や鎖肛など)、ヘルニアや停留精巣・包茎などの泌尿器疾患までの多岐にわたっています。また時には他科の医師と連携をとりチーム医療を行うこともあります。「外傷なら救命・脳神経外科・整形外科と、頸部なら耳鼻咽喉科・頭頸部外科と、体表面は形成外科と…」というような体制が確立されており、大きな治療効果をあげています。各診療科間の垣根がないこの精神は、久留米大学が誇れる部分でもあります。
外科的治療では、従来の開腹による手術法に加えて、非侵襲的手術治療の一つとして胸腔鏡や腹腔鏡という内視鏡を使った鏡視下手術を積極的に行い、九州でも数少ない内視鏡外科技術認定医による指導を受けながら研鑽を積むことが可能です。鏡視下手術では3~5mm前後の穴を胸やお腹に数箇所開けて、その穴から胸腔鏡や腹腔鏡や特殊な手術器具を挿入し、胸やお腹の中が映し出された画面を見ながら手術を行います。鏡視下手術では、従来の開胸手術や開腹手術に比べて手術後の痛みが少なく、手術の翌日からの歩行や食事が可能となることによって早期退院につながり、通学や日常生活に速やかに戻ることができるなどの長所があり、また傷も小さく美容的にも大変すぐれています。
- 鏡視下手術の適応となる主な疾患
- 胸部:縦隔腫瘍、悪性腫瘍肺転移、膿胸、横隔膜弛緩症、CPAMなど腹部:胃食道逆流症、先天性胆道拡張症、食道アカラシア、胃軸捻転症、肝嚢胞、胆嚢結石症、球状赤血球症、特発性血小板減少性紫斑病、メッケル憩室症、急性虫垂炎、高位・中間位鎖肛、ヒルシュスプルング病、腸間膜嚢腫、卵巣嚢腫、尿膜管遺残など腹壁:鼠径ヘルニア、白線ヘルニア、停留精巣など
また、久留米大学小児外科では術後の速やかな消化管運動機能(胃や腸の運動機能)の回復や免疫力、肝機能の改善などを目指し、積極的な漢方治療も行っています。また当科では、経験のみに頼る漢方治療ではなく、確実な科学的根拠(EBM)や非侵襲的な消化管運動機能検査を組み合わせて治療効果を見ています。
臨床において当科が目指すのは、患児・家族のトータルケアです。手術手技や検査など診療技術は当然のこと、患児・家族との精神的関わり、インフォームドコンセントなども適切に指導しています。
また当科では、外科技術の研鑽だけではなく臨床栄養学や医療安全活動に力を入れています。臨床の現場において患者さんに適切な栄養療法を選択するためには、腎機能や体液の組成・仕組みや数多くの種類の輸液製剤や経腸栄養剤への理解、患者さんが抱える様々な問題点の分析など多岐にわたります。臨床現場における輸液・栄養管理は、患者さんの適切な管理を行う上で非常に重要であるにもかかわらず、豊富な知識と経験をもった指導医から教育を受けにくいといった問題があります。その点当科では、臨床栄養学を専門とし豊富な知識と経験をもった指導医から指導を受けることが可能であり、院内の多職種によるNutrition Support Teamの活動に積極的に参加することにってセカンドキャリアの構築も視野に入れています。 さらに、近年における日本の医療において、医療安全確保が重要な課題となっています。院内の医療安全活動に参加することによって医療安全確保に必要な基本的な考え方、医療現場で発生しやすい事故やその防止対策について学びます。それによって医療安全確保の重要性を認識し、医療現場で起こりやすい事故の発生を防止するための組織的な対応、現場で行うべき基本的な安全行動の実際を理解し、臨床の現場において安全が確保された行動を実施することにより、より質の高い医療を患者さんに提供できるようになります。
02臨床研修プログラムにおける小児外科
新臨床研修制度下における当科の臨床研修は、研修1年目の外科として、また研修2年目の選択科として希望により研修期間を選べます。
具体的指導内容は下記を参照して下さい。
小児外科臨床研修プログラム
- 研修目的
本研修の目的は一般外科医としての基礎的知識・技術を修得し、さらに小児外科疾患の手術、管理を修得する。また親との関わり、医療スタッフとの人間関係等、医師としての人間的心構えを身につける。
- 研修責任者と指導者
研修責任者 加治 建(診療部長)
- 指導医
加治 建(小児外科一般、消化器運動機能、漢方医学など)
古賀 義法(小児外科一般 内視鏡外科、消化器疾患など)
橋詰 直樹(小児外科一般 臨床栄養、新生児疾患、腹壁奇形など)
升井 大介(小児外科一般 消化管機能運動、外傷など)
- 研修内容
・研修医の指導体制
研修医は3年目以降の専攻医とペアを組み、全ての業務を行う。そのペアの上には上記指導医の中から選ばれた担当指導医がおり、直接指導や評価を行う。指導医は小児外科専門医以上とする。・研修内容
入院患児を担当する他、外来患児の診察にもあたり、外科医としての基本姿勢、基本手技を学ぶとともに小児外科における専門的診療内容を経験しながら外科的手技を含むトータルケアを修得する。特に下記の内容については実際に主治医となり、1例1例の症例を経験して学んでいく。
- 診断技術、検査
小児の胸部、腹部身体所見診察の実際
単純X線写真、エコー、CT、MRIの読影技術
小児腹部エコーの手技
消化管検査の手技(消化管造影、pHモニター、内圧測定など)
小児消化器、呼吸器疾患の診断手順
小児固形腫瘍の診断手順
術前・術後管理
呼吸管理
循環管理
体液管理
栄養管理(静脈栄養と経腸栄養の基礎と臨床)
外科的手技
静脈ラインの確保
中心静脈カテーテル挿入術
小児救急医療処置
基本的縫合法
鼡径ヘルニア根治術
体表良性腫瘍摘出術
虫垂切除術
その他重症疾患の手術助手経験
診療一般
カルテの記載法
患児・家族への説明
診断書の記載法
紹介状、返書、退院記事の記載
患者死亡の場合の処置(死亡診定、死亡診断書、剖検)
保険診療の基礎(保険医としての正しい姿勢)
- 勤務時間とスケジュール
勤務時間:原則として午前8時から午後5時までとする。ただし急患、手術、その他の場合はこの限りではない。
副直:無し(オンコール体制のみ)
休日:土曜、日曜および祝祭日(開院日除く)
ただし、急患、手術、その他の場合はこの限りではない。
小児外科専門医を目指すための研鑽とキャリアプラン
- 大学内研修
鼠径ヘルニア、臍ヘルニア、停留精巣など幼小児に日常みられる疾患の他、久留米大学高度救命救急センターに搬送された小児救急疾患(交通外傷・熱傷など)の救急医療を行います。また、久留米大学周産期母子センターの外科部門として周産期医療(先天性食道閉鎖症・横隔膜ヘルニア・壊死性腸炎など)を行います。また近隣施設からの重症心身障碍児を受け入れ、適切な管理を行います。
- 院外研修
現在、聖マリア病院、埼玉都立小児病院、熊本赤十字病院、新潟市民病院、香川こどもと大人の医療センター、山形市立荘内病院などで小児外科研修・一般成人外科研修を行っています。
- 研修終了後の進路
外科専門医取得後は、個人の希望により進路を決定します。博士号取得のための研究(臨床研究・基礎研究)、外科・小児外科臨床スタッフとしての病院勤務、臨床研究、大学院進学など、様々な方面で活躍しています。
また、希望があれば海外留学も可能です。研修先としてカルガリー大学、ロンドン大学などがあります。
- 取得可能な資格
日本外科学会外科専門医・指導医
日本小児外科学会専門医・指導医
内視鏡外科技術認定医(小児外科領域)
日本栄養治療学会指導医・認定医
日本臨床栄養学会指導医・栄養医
日本外科代謝栄養学会教育指導医
日本周産期・新生児医学会外科認定医
日本腹部救急医学会認定医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
の取得が可能です。各資格の詳細な条件は各学会の規定をご参照ください。
当科では、個人の研修プログラムにあわせて効率よく外科修練が行えることを主眼として、研修先を含めた調整を行っています。後期研修期間内での必要症例経験数習得完了・積極的な学会への参加・必要修練期間終了時での外科専門医取得を目指しています。 小児外科専門医についても同様に、外科専門医取得後最短での資格取得を目指した小児外科研修を行っていることが特徴です。

*2018年4月に導入された新専門医制度により、研修プログラムが変更される可能性があります。
詳しくは日本小児外科学会の規定を必ず参照してください。
入局の案内
下記に記した連絡先にご連絡ください。
前期臨床研修が終わる方で、小児外科に興味がある方、小児診療を学びたい方、外科に興味がある方を募集しています。
*入局は随時受け付けていますが、勤務枠の都合上、4月または10月の勤務開始となります。
*医局のメールアドレスor医局長のメールアドレス
連絡先
久留米大学医学部外科学講座小児外科部門
医局長 古賀 義法
〒830-0011 福岡県久留米市旭町67
TEL 0942-31-7631 / FAX 0942-31-7705
Email:kurume_pedsurg@kurume-u.ac.jp(医局代表)
勤務条件
研修開始時期 随時受付
研修期間 個人の希望により研修コース・期間を決定する。
休暇
個人の希望を十分に考慮する。例)久留米大学小児外科
休暇14日、育休・産休あり(大学規定に沿う)
*男性医師の育休取得も可能です。
研修・留学
① 国内
聖マリア病院、熊本赤十字病院、新潟市民病院、荘内病院
② 国外
ロンドン大学など
我々の小児外科では小児の手術ばかりしているわけではありません。大学外では成人の内科、外科、救急が殆どであり、当然一般小児科の救急外来も診ます。このように、当科では専門性を身につけながらも幅広くプライマリーケアができる医師を育てていくことを目標にしています。
小児外科の疾患の多くは先天性の疾患です。
私たちと一緒に子供達の命守る人、待っています。
久留米大学小児外科
医局長 古賀 義法